僕とコミュニティ活動

2011年03月20日石川工業高等専門学校で開催された、「Hokuriku.rb x 高専カンファレンス」というイベントに参加してきました。
Hokuriku.rb x 高専カンファレンス
そこで「僕とコミュニティ活動」という内容で LT してきたのですが、準備不足で発表時間が足りず、悔しい思いをしました。
今日は、その発表での補足エントリになります。


当日の発表資料はこちらになります。
http://www.slideshare.net/shiget84/ss-7321978

自分のこと

僕は2000年に福井工業高等専門学校の電子情報工学科に入学しました。
高専は「高校+短大」と表現するとわかりやすい、5年制の学校です。普通高校と違い、大学受験がないという大きなメリットがあります。(高専を卒業後に大学3年次に編入するための試験もありますが、数学+英語+専門科目、というところがほとんどであり、一般的な大学受験とは大きく異なります)
しかしその反面、自分で意志をしっかりもっていないと中だるみしてダレてしまうこともあります。僕はダレてしまったほうで、留年こそしませんでしたが2年および3年のときの成績は最下位争いをしているくらいでした。(ちなみに1年のときの成績は25位前後で、真ん中よりちょっと下というくらいでした。)
進学を検討しはじめた4年、5年のときはまた真ん中よりちょっと下くらいの成績にもどりましたが、中だるみしていたときの影響もあり、いくつか受験した大学編入試験全てに不合格となってしまいました。
その後、いろいろあって富山商船高等専門学校の専攻科(制御情報システム工学専攻)に進学することになり、学位授与機構の審査を無事に通り、北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科に進学しました。
そして2年間の博士前期課程終了後、某 SIer に入社し、現在は横浜で働いています。

なんで SIer に就職したの?

僕が就職活動をしていたのは2008年の春。リーマンショックが起きる直前で、売り手市場と言われていた時期でした。
しかし僕は就職活動というものがとても面倒で、あまりしたくありませんでした。石川県の山奥に住んでいたので、就職活動で東京や大阪に出てくるのにしても、時間やお金がかかります。なので、とりあえず近場で採用している会社を受けたらそこそこ大きな SIer に受かったので、そこに決めました。
決めたのにはいくつか理由があります。
一つ目は小さい会社よりも大きい会社に入ろうと思っていたことです。プログラムを書くことを・およびそれにまつわること職業にするのであれば、転職はそう難しいことではないだろうと学生時代の僕にはみえていました。終身雇用制度も崩壊しつつあり、技術力があれば転職はできるだろう、と思っていたのです。しかし、そうは言ってもベンチャーなどの小さな企業から大企業に転職することは、その逆に比べると難しいだろう、とも思えたので、とりあえず大きな企業に入って、もしもそこが自分にあわなかったら職を変えよう、ということで大きな会社に入ろうと思っていました。
二つ目は、自分が具体的にどういうことを仕事にしたいのかよくわからなかった、というものです。プログラムやそれにまつわることを仕事としたい、という思いはありましたが、具体的にこれ、というものがありませんでした。「ゲームプログラマになる」や「Web プログラマになりたい」や「インフラエンジニアって魅力的」のような具体的な思いがありませんでした。(これらの例が具体的かと言われるとそうでもないですが。) そのため、募集人口も多い SI 業界をまず受けることにしました。しかし、「これがやりたい」という明確なことがなかった僕が、お客様のためにシステムを構築する、お客様のかかえている問題を解決する、という受託開発の道を選択できたのはよかったのかな、と思えました。(といっても、これに気づけたのは「野田屋オフそのいち」および「野田屋オフそのに」で amachang さんや katzchang さん、 int128 さんたちとおはなししてからですが。)


しかし実際のところ、 SIer に勤務している、いわゆる「SE さん」が、毎日どのような仕事をしているのか、ということは当時の自分には全然わかっていませんでした。上記のような理由をあげましたが、実際のところ「深く考えずに就職先を決めた。」というのが正直なところです。


「僕とコミュニティ活動」について

何気なく高専、専攻科、大学院を修了後 SIer で働いているごくごく普通の僕のおはなしです。


SIer とは

  • SI+er
  • SI(System Integration)
  • 具体的になにやってるの?
    • 会社、部署、チーム、プロジェクトで全然違う
      • Ruby on Rails で Web アプリケーションをつくっているチームもある
      • Microsoft Visual C++ 6.0 で Windows 用アプリケーションをつくっているチームもある
      • Perlバッチ処理のプログラムをつくっているチームもある
      • COBOL で1980年代に作られたシステムを保守しているチームもある
    • ある企業のなかでも色々なチームがあり、チームが異なれば文化は全然違う
      • 「会社」でひとくくりにはできない

これから話すことは、これまでの僕の経験をふまえた、とても個人的な見解です



SIer で働くということ

「お客様のかかえている問題を解決すること」で僕たち(のチーム)はお金を稼いでいます。
まる2年間、新入社員研修を終えてから、あるお客様のシステムにずっとかかって働いてきた僕は、以下のような感想をもちました。

  • 問題を解決し、システムをリリースできたときの達成感は異常
  • 働くうえで重要視されるのは、お客様がどういう仕事をしているか、という業務知識
    • そのうえで、お客様がどういったことに困っているか、ということを把握し、それを解決するような提案をしていく、というのがリーダの仕事となる
  • 既存のお客様であれば、現行システムがどのようになっているのかということを知るのが重要、現行システムからの派生開発がメインとなる
    • したがって、純粋な技術力や新しい技術というのはあまり必要とされない

コミュニティ活動に参加すること

「お客様の問題を解決する」ことができたとき、とても充実した気分になれます。これでお客様が喜んでくれる、と考えるととてもわくわくします。
しかし、前述のように技術力というのは働いていくうえであまり重要視されません。われわれはエンジニアです。せっかくなら、技術的にもわくわくしたいと思います。
仕事をしているときには味わえない「わくわく!」を味わえる場所、それがイベントです。イベントやコミュニティ活動に参加することによって、技術的なわくわくに出会えることができ、またそこに参加している人と交流することによって自分によい刺激となります。


会いに行けないプログラマ(「Hokuriku.rb x 高専カンファレンス」にリモート登壇的な意味で)であるところの @june29 さんが、以下のような Tweet をしていました。

他の業界のことは知らないから、自分が身を置いている界隈に限っていう。もはや「職場 + コミュニティ」や「学校 + コミュニティ」といったダブルスタンダードが超強力なので「面白い仕事がこない」とか「講義がつまらない」とか言う必要はない。環境が整っていることに感謝して、あとは行動だ。

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http://twitter.com/june29/status/45393063522209792


そう、面白いことはちょっと足をのばせばいくらでも転がっているのです。あとは自分が一歩踏み出すかどうかなのです。何も恐れることはありません。優しい人ばかりです。「興味はあるけれども、自分はそんな技術的なことは詳しくないし、行っても全部理解できないだろうから参加するのはやめよう」などと言ってイベントに参加しないのはとてももったいない。興味があれば積極的に参加しましょう。

僕が参加した全てのイベント・勉強会について内容を完全に理解できたか、といわれると大声で答えます。「No!!!!!」と。
このなかで自分が吸収できているのは10%もないかもしれません。しかし、それでも僕はイベントに参加してきました。
それは「全部を理解できないのは当たり前、ほんの少しでも自分の身になればいい。」と思っていたからです。
最初に一歩踏み出すのはとても勇気がいることで、ハードルが高いと思います。しかし、そこで一歩踏み出せれば、とても広い世界が待っています。僕は、あのとき一歩ふみだしてとても良かったと思っています。


イベントに参加することで、新しい技術や知識について知ることができる。そして、その場にいるエンジニアのかたと交流することによって、とてもいい刺激になる。とてもわくわくします。


僕とコミュニティ活動

土曜日や日曜日にイベント・勉強会に行って、とても充実した時間を過ごします。
しかし、つぎの月曜日には普通に仕事があります。そこでいったいどのように働くのでしょうか。
何事もなかったかのように淡々と仕事をこなしていくのでしょうか。
「お仕事の世界」と「コミュニティ活動の世界」という断絶された二つの世界をつくってしまうのでしょうか。


せっかくイベントでわくわくしたのであれば、イベントでのわくわくをその場で終わらせないように動き出しましょう。
お仕事からはなれてコミュニティ活動に参加する。そこで新しいことを知ったり、色々な人と交流したりして刺激を得る。それをお仕事の世界にフィードバックしてみましょう!


どのようにフィードバックするのか。僕は以下のようなことを(少しずつですが)実践しています。

  • 社内勉強会
  • ノウハウ共有(社内SNSなどを利用)


コミュニティ活動の経験を会社のなかでフィードバックすることによって、少しずつ社内が活気づいていきます。
最初は全然興味がなさそうにしていた僕の同期も、何度か話をしたりしているうちに「○○に行ってきたんだ」という反応をするようになり、先日は「何か面白そうなイベントない?」と声をかけられました。きっとこの次には、自分で何か僕がノーチェックだったイベントを見つけて参加してくれることでしょう。
こういう反応をしてくれたのは今までにまだひとりだけですが、続けていくことによって他にも興味を持ってくれる人が出てくれると信じています。そういう人が増えれば、会社のなかでも技術的にわくわくするような話題に出会えるでしょう。
僕は社会人なので会社を舞台に話をしましたが、学校でも同じだと思います。コミュニティ活動で得たことを、会社/学校でフィードバックする。これを続けることによって、会社や学校でわくわくできることが増えると思います。


そう、大事なのはイベントでのわくわくをその場で終わらせないことなのです。
そのためにまず第一歩。自分にできることから始めましょう。社内勉強会までいかなくても、仕事帰りに少人数で飲みに行ったときに「こういうイベントに参加して、こういうことが知れたのがとても面白かったよ」と話すだけでもよいのです。
断絶された二つの世界をつくらないで、フィードバックすること。自分が一歩踏み出すかどうか。楽しい、わくわくできる毎日を過ごすことができるかどうかは、自分の行動にかかっています。


自分はどういう未来を過ごすのか。それは自分の選択にかかっています。


コミュニティ活動でわくわくして、それを日常の世界にフィードバックして、楽しいわくわくできる毎日を過ごしましょう!